出張撮影を始めて、初めて請求書を出すときに詰まるのがここだと思います。
先に結論を書きます。
3つ目が、いちばん知られていないところです。
※この記事は制度の枠組みを整理したものです。個別の判断は、税理士や所轄の税務署にご確認ください。
必要ではありません。 インボイス(適格請求書)の発行事業者になるかどうかは、任意です。
前々年の課税売上高が1,000万円以下なら、消費税を納めなくてよい免税事業者でいられます。始めたばかりのカメラマンは、ほぼここに入ります。
登録すると、免税事業者ではなくなります。 売上が1,000万円以下でも、消費税を納めることになります。
つまり、登録は「税金が増える選択」です。 それでも登録する理由があるかどうか、という話になります。
お客さまが誰かで、まったく変わります。
| お客さま | 影響 |
|---|---|
| ご家族(個人) | ほとんどありません |
| 式場・スタジオ・撮影会社 | あります |
| 企業(商品撮影、広報など) | あります |
理由は仕組みにあります。
インボイスは、受け取った側が消費税の計算で差し引く(仕入税額控除)ために使う書類です。
七五三やお宮参りを撮って、ご家族から直接いただく場合、そのご家族は消費税の申告をしません。 だからインボイスを求められません。
一方、式場やスタジオの下請けで入る場合、相手は事業者です。 インボイスがないと、相手の納税額が増えます。
家族写真の出張撮影が中心なら、急ぐ話ではありません。
ご家族から直接受ける形の作り方は、公式メールマガジンの第3部で説明しています。
仕事をどこから受けるかは撮影の仕事はどこで受ける?、業務委託の確認事項はカメラマンの業務委託とは?にまとめました。
ここが本題です。
公正取引委員会が、考え方を公表しています(免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A)。
課税事業者にならなければ、取引価格を引き下げるとか、それにも応じなければ取引を打ち切ることにするなどと一方的に通告することは、独占禁止法上又は下請法上、問題となるおそれがあります
一方的に、というところが要点です。 協議をせずに通告することが問題になります。
中小企業庁と公正取引委員会が、具体的な事例も公表しています(インボイス制度後の免税事業者との取引に係る下請法等の考え方)。
事例1
「報酬総額11万円」で契約を行った。取引完了後、インボイス発行事業者でなかったことが、請求段階で判明したため(中略)消費税相当額の1万円の一部又は全部を支払わないことにした。
これは下請法第4条第1項第3号の「下請代金の減額」にあたるとされています。
事例2
免税事業者であることを前提に「単価10万円」で発注(中略)下請事業者に課税転換を求めた。結果、下請事業者が課税事業者となったにもかかわらず、その後の価格交渉に応じず、一方的に単価を据え置くこととした。
これは下請法第4条第1項第5号の「買いたたき」にあたるおそれがあるとされています。
「登録したのだから、消費税分は上げてほしい」と言う権利があります。 そして、その交渉に応じないことが問題になりえます。
あります。
公正取引委員会は令和5年5月、実際に注意した事業者の業態を公表しました(インボイス制度の実施に関連した注意事例について)。
| 注意された発注側 | 相手 |
|---|---|
| イラスト制作業者 | イラストレーター |
| 農産物加工品製造販売業者 | 農家 |
| ハンドメイドショップ運営事業者 | ハンドメイド作家 |
| 人材派遣業者 | 翻訳者・通訳者 |
| 電子漫画配信取次サービス業者 | 漫画作家 |
カメラマンは入っていません。 ただ、イラストレーター・漫画作家・翻訳者と、立場は同じです。
何をして注意されたのかも書かれています。
経過措置により一定の範囲で仕入税額控除が認められているにもかかわらず(中略)消費税相当額を取引価格から引き下げると文書で伝えるなど一方的に通告を行った
「経過措置があるのに」という部分が効いています。 発注側は、まだ全額を損しているわけではありません。
依頼元との報酬の話はブライダルカメラマンはきつい?にもまとめました。
その経過措置が、段階的に減ります。
公正取引委員会の資料に、こう書かれています。
免税事業者からの課税仕入れについては、インボイス制度の実施後3年間は、仕入税額相当額の8割、その後の3年間は同5割の控除ができる
インボイス制度が始まったのは令和5年10月1日です。3年後は、令和8年9月30日。
つまり令和8年10月1日から、8割が5割に下がります。
発注側から見ると、免税事業者に頼んだときの負担が増えます。このタイミングで、条件の見直しを言われる可能性があります。
そのときも、一方的な通告は問題になりえます。 協議を求めてください。
2割特例という負担軽減の措置があります(2割特例の概要|国税庁)。
免税事業者がインボイス発行事業者になった場合、売上にかかる消費税額の8割を差し引いて計算できます。 実質、受け取った消費税の2割を納める形です。
期間が決まっています。
令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間
個人事業主の課税期間は1月1日から12月31日です。令和8年(2026年)の課税期間は9月30日を含むので、令和8年分の申告までが対象になります。
今年分が、最後です。
事前の届出は要らず、確定申告のときに選べます。ただし適用できない課税期間もあるので、ご自身の状況は税務署か税理士にご確認ください。
確定申告そのものは副業カメラマンの確定申告は20万円から?にまとめています。
写真を仕事にするまでの手順は、公式メールマガジンで配信しています。撮り方・仕事のありか・値段の決め方を、曜日ごとに分けて隔日でお届けします。登録はメールアドレスだけです。
こう整理できます。
登録しなくてよいことが多いケース
登録を検討するケース
迷ったときは、いま受けている仕事の相手を数えてください。 個人が多いか、事業者が多いか。それで答えが出ます。
※制度は変わります。手続きの前に、必ず最新の要件をご確認ください。
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執筆:山野井 孝志(フォレスト出版)
柔道整復師。施術とコーチングの経験はあわせて5万件以上。セラピスト向けのセミナー事業で成約率を10%から60%に引き上げ、後輩のセミナー事業の立ち上げにも携わり、年商6,000万円のビジネスを構築。現在はフォレスト出版に在籍しています。
監修:小椋 翔(フォトグラファーの学校 学校長/通称:オグショウ)
一般社団法人日本ニューボーンフォトグラファー協会 代表理事。経営コンサルタント。現在5社経営。わが子を撮影するために購入した3万円のカメラ1台で、そのまま写真館をオープンし、その後に出張撮影を開始。2017年、カメラマンを育成する「カメラマン全力授業」「フォトグラファーの学校」を全国で開始し、卒業生は1,400名。日本初のセルフウェディングフォトスタジオ「SELDING」を沖縄に2店舗経営。経営コンサルタントとして3,000人以上を支援。著書に『増補改訂版 副業するならカメラマン』(フォレスト出版)。
この記事は、小椋翔さんの著書・セミナー・受講生へのインタビューと、各サービスの公式情報をもとに構成しています。
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