ポートレートの撮り方を調べると、カメラメーカーの解説がたくさん出てきます。書かれていることは正確なのですが、前提が「趣味で、好きなだけ時間をかけて撮る」場合です。
仕事として撮ると、条件が変わります。撮る相手は初対面で、緊張していて、時間が決まっています。
そして一番大きいのが、その日に使える光の量が決まっていることです。
光です。カメラでもレンズでもありません。
同じ人を、同じ機材で、同じ設定で撮っても、光の向きが違うだけで別の写真になります。 逆に、機材を変えても、光が悪ければ結果は変わりません。
上手い人がやっているのは、難しい操作ではなく、光のいい場所に立ってもらうことです。
仕事で撮るなら、まずここを押さえます。国立天文台の暦計算室から、東京の各月15日の日の出・日の入りを引きました(出典:国立天文台 暦計算室 各地のこよみ。2026年の値)。
| 月 | 日の出 | 南中高度 | 日の入り |
|---|---|---|---|
| 1月 | 6:50 | 33.2° | 16:51 |
| 2月 | 6:28 | 41.7° | 17:22 |
| 3月 | 5:52 | 52.2° | 17:48 |
| 4月 | 5:09 | 64.1° | 18:14 |
| 5月 | 4:36 | 73.2° | 18:39 |
| 6月 | 4:25 | 77.6° | 18:58 |
| 7月 | 4:36 | 75.9° | 18:57 |
| 8月 | 5:00 | 68.4° | 18:31 |
| 9月 | 5:23 | 57.4° | 17:49 |
| 10月 | 5:47 | 45.9° | 17:06 |
| 11月 | 6:16 | 35.9° | 16:35 |
| 12月 | 6:43 | 31.1° | 16:29 |
12月と6月では、日の入りが2時間半違います。
ここから、実務の判断が2つ出てきます。
1. 11月・12月に「15時から」の予約を受けてはいけない
11月の日の入りは16:35です。15時に集合して、着替えや移動をして、実際に撮り始めるのが15時20分だとすると、使える時間は1時間ちょっとしかありません。しかも最後の30分は光がかなり落ちます。
七五三は11月が本番です。この月だけは、午後の枠を早めに切る必要があります。
2. 夏は「昼」を避ける
6月の南中高度は77.6°。ほぼ真上から日が当たります。 この光で人を撮ると、目の下、鼻の下、あごの下に濃い影が出ます。どんなに設定を工夫しても消えません。
一方、12月の南中高度は31.1°。冬は一日中、斜めから光が当たります。 寒いですが、人物を撮るには冬のほうが素直な光です。
季節と時間で、撮れるものが変わります。設定を覚えるより先に、ここを知っておくほうが結果に効きます。
基本は、太陽を相手の後ろに置きます。
正面から当てると、まぶしくて目を細めます。表情が固くなる原因のほとんどがこれです。後ろから当てると、髪の輪郭が光って、顔には柔らかい光が回ります。
顔が暗くなるときは、露出を+0.7〜+1.0段ほど明るく補正します。背景が白く飛んでも、顔が適正なら写真として成立します。 逆は成立しません。
昼の強い日差しのときは、日陰に入れます。 ただし木漏れ日のようなまだら模様の日陰は避けてください。顔に斑点が出ます。建物の影のように、均一な日陰を探します。
屋内なら、窓に向かって立たせます。 部屋の照明より、窓から入る光のほうがきれいです。窓を背にすると顔が影になります。

絞りはF2.8〜F4
開放(F1.4やF1.8)まで開けると背景はよくぼけますが、ピントの合う範囲が数センチしかありません。 目に合わせたつもりが、まつげやまぶたに来ます。仕事では歩留まりが落ちます。
2人以上を並べるならF5.6まで絞ります。前後にずれて立つためです。
シャッタースピードは1/250秒以上
止まって撮る場合でも、人はわずかに揺れます。1/250秒を下限にしてください。子どもが混ざるならもっと速く。詳しくは子どもの写真の撮り方は?で扱っています。
ピントは目に合わせる
瞳を検出する機能があれば入れてください。片目しか写らない角度では、手前の目に合わせます。
ISO感度は上げてよい
暗いところで無理にシャッタースピードを落とすより、感度を上げるほうです。ぶれた写真は直せませんが、多少のざらつきは編集で目立たなくできます。
撮り方を手順に変える/仕事のありかを知る/始めない理由をひとつずつ外す。 この3つを曜日ごとに分けて、隔日でお届けしています。登録はメールアドレスだけです。
顔の写り方は、焦点距離で変わります。
| 焦点距離 | 写り方 |
|---|---|
| 広角(24mm前後) | 近づくと顔の中心が大きく写る。人物には向かない |
| 標準(35〜50mm) | 自然。周りの景色も入る |
| 中望遠(85〜135mm) | 顔の形が素直に出る。背景がよくぼける |
出張撮影のように場所が変わる仕事では、標準ズーム1本で足ります。レンズ交換をしている間に、相手を待たせることになるためです。
単焦点を使うなら35mmか50mm。85mmは写りがきれいですが、離れないと入りません。 狭い場所では使えないことがあります。
ここが技術より効きます。多くの人は、カメラを向けられると固まります。
「笑って」と言わない
作った笑顔になります。笑わせたいなら質問をしてください。「今日はここまでどうやって来たんですか」「休みの日は何をしていますか」。答えている途中の顔が、一番いい表情になります。
先に自分の話をする
相手だけに話させると面接になります。こちらから少し話して、それから聞きます。
「うまく写れない」と言われたら
否定しないでください。「大丈夫ですよ」ではなく、こちらが位置と角度を決めます。 撮られ慣れていない人は、どう立てばいいか分からないだけです。
横浜・鎌倉で人物撮影をしている卒業生は、そこを自分の役割にしようとしています。
「私は写真撮ることがすごく苦手なのっていう人に対して、どんな風にアプローチしたらいいかっていうことを、ちょっと極めてみたい」
— 元・行政職の公務員から転じた卒業生
行政職の公務員から転じた方のインタビュー(約9分)
撮られるのが苦手な人をどう撮るか。 ここができると、仕事として強くなります。上手い人だけを撮っていればいい仕事ではないからです。
上の表から逆算します。目安はこうなります。
| 時期 | 午後の最終開始時刻の目安 |
|---|---|
| 11月・12月・1月 | 14時まで |
| 2月・3月・10月 | 15時まで |
| 4月・9月 | 15時30分まで |
| 5月〜8月 | 16時30分まで(ただし正午前後は避ける) |
日の入りの1時間半前には撮り始める、と考えると外しません。
日の入り直前の30分は、光がやわらかくて一番きれいな時間帯です。ここを狙って組むと、同じ料金でいい写真が出ます。 ただし短いので、その日の主役の写真は先に撮っておきます。
撮影1件にかかる時間全体の考え方は、出張撮影の料金はどう決まる?で扱っています。
曇りの日は撮れませんか?
撮れます。むしろ均一な光になるので、顔に濃い影が出ません。ただし全体が暗くなるので、感度を上げるか、明るいレンズを使ってください。
雨の日はどうしますか?
屋根のある場所(神社の拝殿前、駅、商業施設の軒下)に移します。予約を受ける段階で、雨天時の代替場所を決めておくと当日困りません。
フラッシュは使いますか?
屋外の日中でも、逆光で顔が暗くなるときに弱く当てると効きます。ただし正面から強く当てると、背景に影が出て不自然になります。
背景はどう選びますか?
主役より目立たないものを選びます。色が多いもの、看板、電線、他人が写り込む場所は避けてください。迷ったら、遠くに抜ける場所を選ぶと背景がぼけます。
何枚くらい撮りますか?
納品する枚数の3倍が目安です。目をつむる、顔が切れる、表情が固い。選べる状態を作っておかないと、納品の段階で足りなくなります。
光の時間は、その日の努力では増やせません。先に知っておくことだけが対策になります。
関連記事:子どもの写真の撮り方は?/集合写真の撮り方は?/写真の撮り方
※この記事で紹介した卒業生の事例は個人のものであり、同様の成果を保証するものではありません。
※日の出入りの時刻は東京の2026年の値です。地域と年によって変わります。撮影地の時刻は国立天文台の暦計算室で確認してください。
撮り方を手順に変える/仕事のありかを知る/始めない理由をひとつずつ外す。 この3つを曜日ごとに分けて、隔日でお届けしています。登録はメールアドレスだけです。
この記事をシェアする
執筆:山野井 孝志(フォレスト出版)
柔道整復師。施術とコーチングの経験はあわせて5万件以上。セラピスト向けのセミナー事業で成約率を10%から60%に引き上げ、後輩のセミナー事業の立ち上げにも携わり、年商6,000万円のビジネスを構築。現在はフォレスト出版に在籍しています。
監修:小椋 翔(フォトグラファーの学校 学校長/通称:オグショウ)
一般社団法人日本ニューボーンフォトグラファー協会 代表理事。経営コンサルタント。現在5社経営。わが子を撮影するために購入した3万円のカメラ1台で、そのまま写真館をオープンし、その後に出張撮影を開始。2017年、カメラマンを育成する「カメラマン全力授業」「フォトグラファーの学校」を全国で開始し、卒業生は1,400名。日本初のセルフウェディングフォトスタジオ「SELDING」を沖縄に2店舗経営。経営コンサルタントとして3,000人以上を支援。著書に『増補改訂版 副業するならカメラマン』(フォレスト出版)。
この記事は、小椋翔さんの著書・セミナー・受講生へのインタビューと、各サービスの公式情報をもとに構成しています。
月・水・金・日の18時30分。撮り方の手順、料金の決め方、依頼の受け方。1通5分で読み終わる分量です。購読は無料で、解除はいつでもできます。