レタッチのやり方を調べると、1枚の写真をどこまできれいにするかの解説が出てきます。肌を整える、色を作る、部分的に明るくする。どれも「作品を1枚仕上げる」ための説明です。
仕事になると、条件が変わります。枚数と締切があります。
そして、ここでつまずくと収入が止まります。撮影の時間ではなく、編集の時間で受けられる件数が決まるからです。
出張撮影のfotowaは、60分の撮影で75枚以上を、1週間以内に納品することを規定しています(出典:fotowa フォトグラファー募集。2026年8月19日時点)。
この75枚を基準に、1枚あたりの時間で計算してみます。
| 1枚にかける時間 | 1件あたり | 月20件受けたら |
|---|---|---|
| 30秒 | 38分 | 13時間 |
| 1分 | 75分 | 25時間 |
| 3分 | 3時間45分 | 75時間 |
| 5分 | 6時間15分 | 125時間 |
1枚3分かけると、月20件で75時間です。週に約19時間。会社員をしながらでは回りません。
1枚1分でも月25時間。平日に毎日1時間ずつ使う計算です。
つまり仕事としてのレタッチは、1枚あたり30秒〜1分で終わらせる作り方を先に決める仕事になります。「1枚を丁寧に仕上げる技術」とは、目指すものが違います。
本業を持ちながら夫婦で出張撮影をしている卒業生は、始めた頃の失敗をこう話しています。
「駆け出しの頃って、嬉しくて全部受けちゃうんですよ。ただ受けすぎて、自分のキャパシティ無視して受けちゃって、終わらない」
— 本業を持ちながら夫婦で出張撮影をしている卒業生
夫婦で出張撮影をしている方のインタビュー(約12分)
終わらなくなるのは、撮影ではなく編集です。
混ざりやすいので、先に分けます。
| 何をするか | 枚数 | |
|---|---|---|
| 現像 | 明るさ・色・傾きを整える。写真全体の調整 | 納品する全部 |
| レタッチ | 写り込みを消す、肌を整えるなど、部分的な修正 | 一部だけ |
仕事で時間を食うのは現像のほうです。75枚全部に必要だからです。
レタッチ(部分修正)は、必要な写真にだけかけます。全部にかけると終わりません。
順番を固定します。毎回同じ順で進めると、迷う時間が消えます。
1. 選ぶ(全体の3割の時間)
撮った300枚から、納品する75枚を選びます。ここを丁寧にやりすぎないでください。迷ったら残すで進めて、あとで削るほうが速く終わります。
外すのは3つだけです。目をつむっている、ぶれている、顔が切れている。
2. 1枚を仕上げる(基準を作る)
選んだ中から代表的な1枚を決めて、それだけ時間をかけて仕上げます。明るさ、色、コントラスト。ここで作った状態が、その撮影全体の基準になります。
3. 残りにコピーする
その設定を、同じ場所・同じ光で撮った写真すべてに貼り付けます。ここが一番効きます。74枚を1枚ずつ調整してはいけません。
4. ずれたものだけ直す
日が陰った、室内に移った、逆光になった。光が変わったところだけ、まとめて調整し直します。
5. 部分修正は最後に、必要な写真だけ

依頼者が見るのは1枚ではありません。75枚を続けて見ます。
このとき、1枚ずつ丁寧に仕上げた写真より、全部が同じ色味で揃っている写真のほうがよく見えます。バラバラだと、上手い1枚があっても全体が雑に見えます。
揃えるには2つです。
設定を保存して使い回す
自分の基本の設定を保存しておき、毎回そこから始めます。ゼロから作らないぶん、時間も仕上がりも安定します。
撮影中に光をそろえておく
編集で揃えるより、撮る段階で同じ光の場所を使うほうが速いです。屋外と屋内を行き来すると、それだけ編集が増えます。撮影の組み立てについてはポートレートの撮り方は?で扱っています。
撮り方を手順に変える/仕事のありかを知る/始めない理由をひとつずつ外す。 この3つを曜日ごとに分けて、隔日でお届けしています。登録はメールアドレスだけです。
家族写真では、基本は直しません。
ニキビや傷など、その日だけのものは消してかまいません。しかし顔立ちを変える加工は、家族写真では望まれないことがほとんどです。「その日のその人」が残ることに価値があるからです。
判断に迷ったら、依頼者に聞いてください。撮影前に一言確認しておくと、あとで揉めません。
注意すべきなのは、作例と納品の差です。作例では強く加工して、納品はそのまま。これをやると「思っていたのと違う」になります。作例はそのまま納品できる仕上がりで並べます。作例の作り方はカメラマンのポートフォリオは何枚必要?で説明しています。
現像とレタッチで役割が分かれます。
| 向いていること | |
|---|---|
| 現像ソフト(Lightroomなど) | 大量の写真を、同じ設定でまとめて処理する |
| 画像編集ソフト(Photoshopなど) | 1枚に対する細かい修正 |
仕事の流れで言えば、ほとんどの時間は現像ソフトで終わります。 画像編集ソフトを開くのは、数枚だけです。
カメラメーカーが出している無料の現像ソフトでも、まとめて処理する機能はあります。まず手元にあるもので始めて、追いつかなくなってから有料のものを検討して構いません。
効く順に並べます。
1. 撮影枚数を減らす
300枚撮れば300枚見ることになります。現場で「これは使わない」と分かっているものを撮らない。 選ぶ時間が減ります。
2. 撮る場所を絞る
場所が変わるほど光が変わり、調整が増えます。60分の撮影なら、場所は2〜3か所までにします。
3. 露出を撮影時に合わせておく
暗く撮って後から持ち上げると、画質が落ちるうえに1枚ずつ調整が必要になります。撮る時点で合っていれば、まとめて処理できます。
4. 選ぶ基準を決めておく
「いい写真」で選ぼうとすると止まります。外す基準(目をつむり・ぶれ・見切れ)だけ決めて、残りは全部残すほうが速いです。
RAWとJPEGはどちらで撮りますか?
仕事ならRAWです。あとから明るさや色を大きく直せます。ただしデータが重く、処理に時間がかかります。パソコンが遅いと編集時間そのものが伸びます。
編集用のパソコンはどのくらい必要ですか?
枚数を回すなら、写真の表示が待ち時間にならない程度が要ります。1枚めくるのに3秒かかると、75枚で4分近くが待ち時間になります。
納品はどう渡しますか?
データ便やオンラインストレージのリンクで渡すのが一般的です。保存期限を必ず伝えてください。「ダウンロードできなかった」は起きやすいやりとりです。
AIの自動補正は使っていいですか?
使えます。ただし全部を任せると仕上がりが揃わないことがあります。基準の1枚は自分で作り、そこから広げるやり方のほうが安定します。
どのくらいで慣れますか?
最初の数件は、1枚あたり3分以上かかると思ってください。手順が固まると短くなります。時間がかかるうちに件数を増やさないことのほうが大事です。
編集が終わらない人は、たいてい編集が下手なのではなく、撮り方の段階で仕事を増やしています。
関連記事:出張撮影の料金はどう決まる?/ポートレートの撮り方は?/写真の撮り方
※この記事で紹介した卒業生の事例は個人のものであり、同様の成果を保証するものではありません。
※納品の規定は2026年8月19日時点で公式ページに掲載されていた内容です。変更されることがあります。
撮り方を手順に変える/仕事のありかを知る/始めない理由をひとつずつ外す。 この3つを曜日ごとに分けて、隔日でお届けしています。登録はメールアドレスだけです。
この記事をシェアする
執筆:山野井 孝志(フォレスト出版)
柔道整復師。施術とコーチングの経験はあわせて5万件以上。セラピスト向けのセミナー事業で成約率を10%から60%に引き上げ、後輩のセミナー事業の立ち上げにも携わり、年商6,000万円のビジネスを構築。現在はフォレスト出版に在籍しています。
監修:小椋 翔(フォトグラファーの学校 学校長/通称:オグショウ)
一般社団法人日本ニューボーンフォトグラファー協会 代表理事。経営コンサルタント。現在5社経営。わが子を撮影するために購入した3万円のカメラ1台で、そのまま写真館をオープンし、その後に出張撮影を開始。2017年、カメラマンを育成する「カメラマン全力授業」「フォトグラファーの学校」を全国で開始し、卒業生は1,400名。日本初のセルフウェディングフォトスタジオ「SELDING」を沖縄に2店舗経営。経営コンサルタントとして3,000人以上を支援。著書に『増補改訂版 副業するならカメラマン』(フォレスト出版)。
この記事は、小椋翔さんの著書・セミナー・受講生へのインタビューと、各サービスの公式情報をもとに構成しています。
月・水・金・日の18時30分。撮り方の手順、料金の決め方、依頼の受け方。1通5分で読み終わる分量です。購読は無料で、解除はいつでもできます。